DearMyDoughtor




「空手!?女の子なのにかい?」

すっとんきょうな声を上げて、彼はまじまじと自分の妻を見つめた。
日本人離れした美人の彼女は、華やかな笑顔で平然と言ってのけた。

「あら、男女の差を持ち出すなんてナンセンスですわ、あなた。これからは女性だって
強くなければならない時代よ」
肩まで伸ばした髪をリボンで二つに結ったかわいい娘を彼は見る。
ようやく3歳になったばかり。
「ぱぱ、からて、やる」
あどけない表情で、彼の愛娘はだっこをねだる。
よしよしと抱き上げながら、彼は言う。

「それにしても…。もう少し大きくなってからでもいいだろう」
なんとしても、しとやかな大和撫子に育て上げたいと願う彼は食い下がる。
「そんなことでは、身に付かないわ。これくらいの年から始めて、ちょうどいいのよ」
いつもながらに自己主張の強い妻に、彼はしぶしぶ承諾した。




財閥と呼ばれる冷泉寺家に生まれ、秀才ではあったものの、処世術に疎い彼は
研究室にこもり、冷泉寺財閥の中枢に関ることはなかった。
彼女は大人しい彼の、熱烈な求婚に負けて結婚した。彼の素朴なところに惚れたのだ。
しかし、家庭の主権は彼女が握っていた。
「そう言うのなら、習わせよう。できないよりは、何事もできたほうがいいからね…。
そうだ。何か楽器も一緒に習わせよう。3才といえば、習い事を始めるにはいい年
だからね。ヴァイオリンを習わせよう」
妻は、眉宇をくもらせる。
「だったらあなた、ピアノにしましょうよ。冷泉寺の青湘学園にはいい先生方も
沢山いらっしゃることだし。
「……、あぁ、そうだな」


またしても。妻の意見に負ける。
彼は、それでも気にしなかった。
女の子に空手が続くわけがない。ピアノが上手になったら他の楽器も習わせよう。



しかし勝気な妻の遺伝子を多いに受け継いだのか、かわいい娘は彼の思い通りには
育たなかった。











「おい!いい加減にしろ!いつまで寝ているつもりだ!?」
銀バラのメンバー相手に、水をぶっ掛ける娘の姿があった。

「貴緒、それくらいにしてやったらどうだ?」

情けない父親の声は、冴えた刃物のような娘の視線一つで、消え去った。








無法地帯の佳子さまにプレゼントさせていただいたお話です。
ちなみに、娘の「どーたー」の綴りがあやふやです(おい!)

BACK